教室の片隅に座る君を見ていた。
僕には分からない本を読む君を、教科書を読むフリをして盗み見た。
綺麗な君に僕は沈んだ。
神様はどうしてこうも僕と彼の間に差をこんなにも付けたのだろう。
「ー、お前何やってんだよ!」
その声に顔を上げる間もなく机を蹴られて反動で僕も椅子から転げ落ちた。
手にしていた教科書が手から落ち女子の楽しんでいるのか怖がっているのか定かでないキャーという悲鳴が耳に付く。
顔を上げるとクラスメイトの男子が僕を取り囲んでいた。
ぼんやりと、今日もか、と思った。
何で僕はいつも虐められてるんだろう。
僕が何かをしたわけでもないのに。
「教科書なんか読んで優等生面すんなよ!」
落ちていた教科書を奪われ目の前で引きちぎられた。
小学生のくせによくそんな力があるものだ。
絶望するほどこのクラスの人と仲が良いわけではない。
けれど、誰も助けてくれないのもなぁ…。他力本願っていうのかな、こういうの。
「止めろよ」
いつもは興味も示さない芦川が僕を背にして男子に立ち向かう。
芦川の行動に男子は怖じ気づき蜘蛛の子を散らすように姿を消した。
本能って強いな。
「立てるか?」
ぼぅっとしていた俺はゆっくりと芦川を見上げた。
手を差し出して綺麗な顔で笑っている。
劣等感、羞恥心
この気持ちを何て言うのだろうか。
「…大丈夫だから…」
僕はそういって芦川の手を使わずに立ち上がり、さっさと机と椅子を戻すと、何も入っていないランドセルだけを手に教室から逃げた。
走って学校から出ていく。
先生の「どうしたの!」という声が後ろから聞こえたけど僕は走った。
体育の授業だってこんなに走ったことがない。
しばらくして僕は走るのを止めた。
額にかいた汗を拭い肩で息をする。
「学校…サボっちゃったな…」
このまま帰るわけにも行かず、僕は目に入ってきた神社で時間をつぶすことにした。
神社には誰も居ない。
僕には都合が良かった。
手近のベンチにランドセルを下ろし、膝を立て顔を伏せてそのまま抱きかかえるように座る。
あの時、芦川との違いをものすごく感じさせられた。
違う人間なのだから違くて当然なのに、僕はすっごく恥ずかしかった。
僕にないモノがすべて芦川には揃っている。
「酷いことしちゃった…」
僕を助けてくれたのに。
意地を張って。
もう学校行きたくない。
06/9/2修正