季節はまだ暑い。

「めっちゃ、あっつい」

動くのも億劫なほどの暑さに俺はソファの上で足を投げ出し横になっていた。

エアコンの入っていない静かなリビングで俺は一人。

座木さんはリベを連れて買出しに行ってしまったし、秋は・・・今何処に居るのやら。

朝早く何処かへ出かけたらしい。

30℃を超える気温でよく皆動く気になるな、と感心して俺は机の上に手を伸ばした。

目的の物が手に触れる。

「めっけぇ、扇風機のリモコン」

誰に当てたわけでもない科白は当然ながら独り言になる。

ピッという音をあげて扇風機が動き出した。リモコンを机に戻す。

最初こそ生ぬるい風が循環していたが今はすでに涼しく心地よい風に変わっている。

自分一人しか居ない場所でエアコンを付ける事が苦手なのだ。要は貧乏性。

流れてくる風に息をつき、必死に鳴く蝉をBGMに俺の意識は飛んだ。

暑い夏は寝て過ごすに限る。





+ + +





「何ではエアコンを付けないかねぇ」

帰ってきた秋は外と同じくら暑い(それでも幾分はマシだが)リビングで寝ているに呆れた。

額に汗を滲ませて寝苦しそうなの寝顔に秋は溜息をついて、お得意の手品−指を鳴らし手の中にエアコンのリモコンを出現させるとエアコンのスイッチを入れた。

ブブッと鈍い音を響かせながらエアコンが動き出す。

涼しい風が心地よい。

秋は回っていた扇風機のリモコンを手にとり消して、座木が出しておいたタオルケットをに掛けた。

涼しい風にの寝苦しそうな顔は既に緩和されていた。

秋は締まりの無いだらしない顔をさらしているの頬を軽く引っ張った。

「ん・・・」

が唸った。

起きる気配は全然なく秋が手を離すと、再び規則的な寝息が響いた。

秋はしばらくを眺めていたが思い出したように窓へと向かう。

窓が開けっ放しだ。

窓に手を掛けると外と中の気温の差が良く分かった。

カラカラと音を立てて窓が閉まる。

起こしたかと思いを振り返ったが起きる気配は無い。

秋は苦笑して、窓の鍵を閉めた。

蝉はこんな暑い中良く鳴くものだと関心した。