昼に目が覚めた。
昨晩は遅くまで本を読んでいたので寝坊したわけだが、読んだ本は面白かった。
目を擦り、欠伸を一つすると腕を伸ばして伸びをして部屋のエアコンのスイッチを切りは本を持ちロフトから降りた。
箪笥から適当に七部長けの紺のズボンをはき白いシャツを着る。
ズボンに着いていたサスペンダーはそのまま垂らしは一度部屋に置いてある鏡の前で髪をとかし自室を出た。
本を持ったまま先に洗面所に入り顔を洗い、歯ブラシをする。
そして、もう一度髪をとかした。
* * *
冷房の効いた部屋が涼しい。
「おはよう、座木さん」
台所に立つ長身の男に挨拶をする。
直ぐに朗らかに笑い挨拶を返してくる座木に笑い返し、手に持っていた本をリビングの机に置いた。
「本ありがとう。面白かったです。此処に置いておくね?」
「それは良かった」
座木はそういうと再び台所に消えた。
昼ご飯を作っているのだろう。
あくまでカンだが、今日は冷麺な気がする。
「おはよう、リベ」
「おはようございます、さん!」
リビングにおいてあるソファーに座ってテレビを見ていたリベザルに挨拶をすると元気な声が返ってきた。
も向かい側のソファーに座る
「秋は?」
「バスケをやりに出かけました」
そう答えるとリベザルはCMあけのテレビに釘付けになった。
『波乱万丈過酷人生-夏の怪談編-』と画面の端に書かれている文字を読み取り、少し呆れた。
波乱万丈な人生と怪談にどんな接点があるのだろうか。
そもそも、リベザルは波乱万丈人生が見たいのか怪談が見たいのかにも悩む。
テレビで良く見る御馴染みのリポーターがマイクを持って心霊スポットを回っていた。
さらに謎な番組だった。
* * *
「うひゃぁ」
いつの間にか又眠ってしまったらしく首元に冷たい何かが触れる事で目が覚めた。
慌てて目を開けてそちらを見ると額に汗を滲ませて手に水滴がついたコップを持っている秋が居た。
冷たいものはコップだったらしい。
一度息をつき時計を見ると10分ほど寝ていたらしいく、は欠伸を一つした。リベザルは居なくなっている。
「出かけも寝てるかと思えば、帰ってきても寝てるとはね」
「おかえり、秋。おはよう」
「遅すぎだ」
朝の挨拶に対して不平をもらしているらしい。
秋はの座っているソファーの肘掛に腰をおろしにコップを突き出してきた。
何事かと思いながらコップを受け取る。
特に何の匂いもしないそれは色的に麦茶だろうか。
「飲んでも良い?」
「飲みかけで良いなら」
秋から了承を得るとをそれに口をつけた。
昨晩から何も飲んでいなかったので乾いていた喉が潤う。
半分ほど飲んで息をつくと、秋に髪を触られる感触に顔を上げた。
「動かない」
「うあい」
秋に言われ、は顔を下げ元の格好に戻った。
髪を梳く動作に眠気を誘われながら意識をたもつ。
「また寝た?」
「起きてる!」
うつらうつらとはしていたが寝ていたわけではないので弁解すると秋に面白そうに笑われた。
秋はの手からコップを奪い全て飲みほすと食卓へと向かった。
は髪型が弄られている事に気が付き、洗面所の鏡に自分を映した。
髪にピンクの髪留めが付けられている。
「さん、ご飯です」
「あ、うん」
「あ、それ可愛いですね」
何故か照れているリベザルはおいておくとして、リベザルと連れたってリビングへと戻る。
「秋、コレ」
「うん、貰ったんだ」
「何でピンク?」
「似合いそうだったから」
秋は食卓の椅子に座り満足そうにを見る。
ピンクが似合うと言われても男としては複雑な心境だ。
「あ、さん。そのピン可愛いですね。よく似合ってます」
「・・・ありがとう」
座木にまでそういわれたら、返す言葉が無い。
不服を漏らすタイミングを逃した。
運ぶのを手伝おうと台所に足を向ける。
惜しい、今日は冷やし中華だった。