残念なことに俺の起床時間は早くはない。
何がいけないかと問われると、恐らく夜更けまで起きていることだろう。
結果として俺は大体朝ご飯は食べられない11時前後に目を覚ます。
まだ、眠たい目を擦り欠伸を一つじてロフトからゆっくりと飛び降りる。
着地の瞬間にバランスを崩しそうになったけどなんとか着地。
足が少し痺れた。
また一つ欠伸をして年中開け放している箪笥から、ピンク色のタンクトップと上から首下が肩まで大きく開いた七分丈のボーダーのシャツを取り出して着た。
下の段から、黒のズボンを取り出して穿く。
このボーダーのシャツは肌触りが良いから好きだけど肩が下がってくるのが若干鬱陶しかったりする。
部屋に付けてある全身鏡で一度確認してから、冷房のスイッチを切り、部屋を出た。
ダイニングで楽しそうに談笑する声が聞こえてくる。
家にいる住人からしてそんなキャラは居ないので誰か来ているのだろう。
洗面所で顔を洗い歯を磨いた。
そして以前秋に貰ったピンク色のピン留めで、前髪を捩り上げて留めた。
いい歳した男が何やってるんだろう、と一瞬ブルーな気持ちになったが、まぁ良いか、と云ういつものポジティブシンキングで乗り切ることにした。
このまま部屋に戻っても良かったが、冷房で乾燥した喉が引き攣れた気がしたので、飲み物を飲もうとリビングに行くことにした。
そして、必然的にダイニングも通ることになる。
* * *
「ようやく起きたか、寝坊助」
「うい、おはよ秋、リベ。…と、直也…?何で此処に、っていうか赤毛さんは誰ー?」
ガチャリと開けてリビングの中を見ると、ソファに座っている秋とリベ。
その向かいに座る、木鈴直也と赤毛さん。
直也は秋伝手に知り合ったバスケ(俺は見学組)仲間で顔見知りだ。
いや、いつの間に家に呼ぶほど仲良くなったのかは知らないけど、まぁいいよ。
直也は良いやつだもん。
問題は赤毛さんだ。
まったく残念ながら記憶を漁っても、彼は知らない。
「あら、カワイイ子だわ。貰っていっちゃおうかしら」
あれ、オカマさん?
見た目パンクなのにオカマ口調って…。
何だろう、越後屋からお菓子を貰って底を開けてもまたお菓子かよ、みたいな悲しさが募ってくるのは。
「リベザルだったらいつでも差し上げますよ」
軽口を叩く秋を横目に、俺は赤毛さんの発言について考えた。
物言いから、多分初めまして、な方だろう。
だから俺は挨拶をしなくちゃいけないんだ。
えっと、さっき秋に寝坊助と言われたからもう昼なわけで。
「こんつぁ、えっと、居候のです。はじめまして」
ぺこりと頭を下げる。
「ま、礼儀正しい子。ポイント高いわねぇ。私は秋くんとリベザルくんのお友達の高橋総和よ。初めまして。総和さんって呼んで頂戴」
座ったままだが、ぺこりと頭を下げられた。
俺がお辞儀を見ていると総和さんがちょうど顔を上げてきて視線が合ってしまった。
お互い、はにかむ。
悪い人では無さそうだ。