「あんれ、ヤッホーイ。シズちゃん」
「…」
午前4時。
いくら渋谷の街とはいえど、この時間は暴走している連中もヘリまだ静かだ。
臨也の家からの帰り道、家を目指していると公園のベンチに座る静雄を発見した。
「何やってんの」
静雄の隣に座り、顔を窺う。
静雄は顔を顰めていた。
いつもみたいにすぐキレるわけではない。
の前ではいつもそうだ。
「その呼び方止めろ。アイツみたいになんぞ」
「ソレは嫌だなー」
不愉快の理由は渾名だろう。
臨也と同じ呼び方をされるのが嫌らしい。
そんな静雄がちょっと可愛く思えては内心笑った。。
大っぴらに笑うと、メチャメチャ痛いデコピンをくらうことになる。
商売モノの顔に傷は付けられない。
「こんな時間にどうしたんだよ」
「臨也んとこに行ってたの」
先のの言葉を具体的に今度は静雄が尋ねる。
事もなさげ言ってのけるとバキッという音がした。
静雄が手を掛けていたベンチの背の端が粉々に砕け散っている。
「あーあ、公共物損害じゃん」
が咎めてはいない口調でのんびりと言った。
静雄が手に付いた屑を払う。
「あんな奴の処に出入りすんなよ」
静雄がを睨み付ける。
眉間に寄った皺を見ては少し感心した。
そんなことで気分を害すとは結構繊細だな、と。
「シズちゃんに心配して貰っちゃった」
睨み付ける静雄に対してにっこり笑い返すと、呆れた顔をされた。
「お前なぁ…」
「大丈夫、仕事聞きに行っただけだよ」
そう言う意味じゃねぇよ、と頭を掻く静雄には笑った。
「そんなの分かってるさ」
そう言うとデコピンをされそうになり慌てて「ごめんね」と付け足した。