初めて彼に会ったのはラビに紹介されてだった。
抜きん出て整った顔立ちをした彼に一目で僕は恋に落ちた。
けれど、彼を目で追えば追うごとに彼が誰を見ているのかがわかってしまった。
『もしかして、ラビの事好き何ですか・・・?』
そうじゃなければ良いのにと想いながら二人きりの時に聞いてしまった。
顔を赤くして黙り込む彼に悟ってしまった。
ああ、彼はラビが好きなんだと。
正直痛かった。
けれど、彼がそれで幸せならと僕は彼を応援する事にした。
彼が笑っていてくれるなら自分も笑える気がした。
そうやって彼に関わっていくうちにラビも彼が好きだという事が分かってしまった。
両思い。
本当の事を言うと少し嫉妬もした。
彼が僕を好きでいてくれたら良いのに。
ラビから彼を奪い取る事も考えたがそんな事をしても、きっと彼は自分に笑いかけてはくれないだろう。
そして僕はある日、辛そうな顔をした彼から、『ラビを諦める』という事を聞いた。
ブックマンに忠告されたらしい。
彼を傷つけたブックマンに腹が立ったが同時に喜んでしまった。
ラビから彼を奪うチャンスが出来た。
けれど、彼は今でもラビを見ていた。
僕が彼を好きなように諦められないように、彼もラビを諦められないのだ。
そんなある日、猛スピードで走り去る彼を見かけた。
彼の来た方向を見ると唇をかみ締めて壁に拳を叩きつけ八つ当たりをするラビを見つけた。
がラビをふったのに気が付いた。
彼はきっと泣いている。
慌てて彼の後を追って彼の部屋へ向かった。
慰めなくてはと思ったがそれ以上に今がチャンスだとも思った。
彼はシーツに包まっている。
ベッドの縁に腰をかけ声をかけた。
どうやって靡かそうと思っていたら、泣き腫らした瞳がこちらを向いた。
その瞬間、僕はすごい罪悪感を感じた。
こんな時に僕は何て事を考えていたんだろう。
可哀想な、傷ついた彼を、自分はさらに傷つけようとしているのに気が付き愕然とした。
ごめんなさい。
臆病で声に出せない僕は心の中で何度も繰り返して謝り、彼を抱きしめた。
なんて小さい人なんだろう。
笑う彼の背はとても大きく見えたけれど、触れてみると彼の儚い小ささを知った。
僕は無意識に小さい子を慰めるように彼の背を撫でた。