任務から戻ってきたオレは愕然とした。
が居ない。
任務でとかじゃなくてこの教団から消えていた。
任務先でがどんな状況でどれだけが苦しんでいるのかアレンに説教されて、急いで任務を終わらせて戻ってきた。
に会いたかった。
ごめんと謝りたかった。
ブックマンだって何だってが好きだと伝えたかった。
なのに
「は!はどうしたんさ!」
コムイに向かって怒鳴る。
コムイに怒鳴ったところでどうにもならないのにが此処から去った事を聞いてショックでどうしようもなかった。
コムイが入り口に座る少女を見ながら口を開いた。
「そこにいるイブを助けるためにのイノセンスを摘出したんだ」
「どうしてですか?適合者はでしょう?」
アレンがイブを見て険しい顔をした。
確かにイブの喉にの喉にあったのと同じ十字の跡が刻まれている。
「・・・は正式な適合者ではなかったんだ。はイノセンスの仮の住まいといった所でね、だからとのシンクロ率が低かったんだよ。正式な適合者はイブ。はイブを見たとき感じたそうだよ。コレは自分のでは無いと。だから僕にイノセンスの摘出を求めてイブに与えるように要求してきたんだ」
「でも、兄さん。寄生型のイノセンスの摘出は難しいんじゃ…」
アレンたちと共に任務に出ていたリナリーがの身を案じる。
ラビは顔を伏せていたが横から唇をかみ締めているのが見えた。
「…そう易々と出来るものではないよ。確立は10%もない」
「なら何で…!」
「事は一刻を争ったんだ。…本当はこんな事言いたくないけど、適合者であるイブと、適合者ではないと大切なのは…分かるだろ?それにがそれを望んだんだよ。使って欲しいと」
「っ!」
「は、は生きてるんだよな?」
ずっと黙っていたラビが口を開いた。
その真剣な瞳にコムイが困ったように笑った。
「本当は本人から口止めされてるんだけどね、生きてるよ彼は。教団からは脱退したけれど…」
「追い出したの?!」
リナリーの言葉にコムイが顔をゆがめる。
「本人の希望だよ。自分はもう役に立てないからって言われて…」
僕には彼を止める権利が無かったんだ…。
コムイが小声で付け足した。
「の居場所は?」
アレンの問いに首を横に振る。
彼は必要最低限のものだけを持ち、後は捨てて独りで出て行ってしまった。
誰も彼の行き先を知らない。
誰もが口を閉ざし黙り込んだ。
その静寂を破るようにパチンという音が響く。
ラビが自分の両頬を叩いたのだ。
「ら、ラビ?」
アレンが不可解なラビの行動にラビの気が狂ったのではと案じるが、逆に驚いた。
ラビの顔が生き生きとしている。
瞳をキラキラとさせて「うっし」と声を出してドアノブに手をかけている。
「何処に行く気だい?」
コムイがラビに問い掛けるとラビはスカッとした笑顔できっぱり言った。
「を探す」
今まで黙っていたブックマンが顔を顰めてラビを制そうと口を開くが声を発するより先にラビが先に話し出した。
「オレはが好きさ。だから諦めない。を探して連れ戻す。ブックマンだって人なんだから独りじゃ生きられない。逆にブックマンだからって独りで居る必要だって無いと思うさ。だから、オレはと生きる。を探す。さすがにこれだけは譲れないさ」
じじい、とラビはにっこり笑う。
それを見たブックマンは好きにしろとため息をついた。
こいつの決心は変わりそうにない。
「・・・そうそう、ラビばっかりに良い所は渡せませんね」
「まったくだわ。私だってが居なきゃ嫌よ」
ドアノブを握るラビの手の上にアレンとリナリーの手が重なる。
ラビが両脇を挟む二人を交互に見ると二人はにっこり笑った。
「そう思ってるのはラビだけじゃないですよ」
「そう思ってるのはラビだけじゃないわよ」
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ああ、もう何で独りってのはこんなに辛いのだろう
世界は終わりじゃないのに
僕は既に終わってるみたいだ
cry cry cry
泣いて叫んで喚いて
好きな人を欲しがって何が悪い
cry cry Don’t cry
抱いてキスして笑いあって
そんな日々が欲しいんだ
cry cry cry
泣いて泣いて泣いて
僕はそれほど君が好きなんだ
cry cry Don’t cry
それでも君が僕の笑顔が好きなら
僕はもう泣かないよ
君に好きでいて欲しいから