冬休み。12月24日のクリスマス・イブ。
オレは学校の談話室で届けられたクリスマスプレゼントの整理をしていた。
といっても、友達からのと祖父母からのしか開けてないんだけどね。
祖父母から届いた真新しい本。学校の図書館には置いてないマグルの小説だ。
それが10冊ばかし。くっそ重てぇけど、オレにとって本はアミーゴ(友達)てなわけで、オレはホクホク気分でソファの上で行儀悪くも膝を折ってソレをパラ読みしているわけだ。
「あれ、じゃないか」
声をかけられ許可してもいないのに前の席に誰かが座る。
誰かと言ってもこの声に心当たりは独りしか居ない。
オレは目を落としていた本から前の席に目を移す。
「やあ、ポッター」
オレは持っていた本を閉じて前の席に座る眼鏡をかけたジェームズ・ポッターに笑いかけた。
ポッターの目は物珍しそうにオレの周りに散乱している本の背表紙を追っている。
「今日はブラック達は一緒じゃないのか?」
「すぐに来るよ…ぁ、ほら来た」
オレが本を眺めているポッターから視線は移して各々の寝室へと続く階段を見ると確かにシリウス・ブラックとリーマス・J・ルーピンが降りてくる最中だった。
「あれ、珍しいね」
「おはよう、ブラック、ルーピン。何が?」
「おはよう。君が冬休みに残っているなんて」
そういわれてオレは首を傾げた。
「オレ、毎年夏しか帰ってないけど?」
「そうなの?」
ルーピンの意外そうな声に頷きながらブラックとルーピンがまた許可無くオレの左右のソファに座るのを止めもせず眺める。
「、これ見ていい?」
本を外から眺めているだけだったポッターがオレの許可を得る前に本を手にとる。
ま、良いけどね。
と呟きながらブラックの視線に気が付きオレはブラックを見た。
「何?」
「いや…毎年居るってわりに見かけた事無いな…と」
「そりゃ、部屋に篭りっ放しだったし」
「今年は篭んねぇのか?」
「去年とかは友達が一緒に残ってたんだけど、今年は帰ってオレ独りぼっちだから暇だな、と」
ふーんとブラックが納得したように相槌を打ったのを見計らってポッターが口を開く。
「これ、何語?」
「日本語」
オレがもらった本は全て日本の本だ。
てっきり読めるから持っていったのかと思いきや読めなかったらしい。
「何で日本なの?」
「だってオレ日本人だし」
そうなの?!と今更三人に驚かれた。
知らなかったのか。そんなに親しくないとは言え三年も一緒の寮だったのに。
「日本人って黒髪に黒目じゃないの?シリウスみたいに」
「俺は日本人じゃねーよ」
「知ってるよ」
ルーピンにそっけなく言われて不服そうな顔をするブラック。
何だ、カッコイイだけかと思ってたら案外可愛いな。
「オレはクオーターだから」
「へー、どっちの?」
「母さん」
「の家有名なのに知らなかったよ」
そういわれて、オレは苦笑した。
家が有名でも別に俺は有名では無いから。
本に興味を無くしたらしいポッターは本を元の位置に戻し、オレの(今だに折っている)膝に乗っけてある黒い小箱に気がついたらしく指を指してきた。
「それ何?」
「これ?」
「うん」
ルーピンやブラックも興味深そうにオレの手の中に移動した小箱を見つける。
期待されたら見せるしかないよな。
「クリスマスプレゼントに貰ったピアスだよ」
そういって箱をあけて見せた。
中には純銀製の羽根をモチーフにした小さなピアスが一つだけ収まっている。
「綺麗だね」
「何で片方?」
「恋人から?」
ルーピン、ブラック、ポッターと言った順でオレに質問してくる。
オレはそれがあんまりにも息ぴったりだったので苦笑して、質問に答えた。
「ありがとう、ルーピン。そんな事聞かれてもオレも分からん、オレがオレに送っているわけではないしな、ブラック。悪いなポッター、恋人じゃなくて両親からだ」
「の親って何やってる人?」
ポッターにそう聞かれてオレは曖昧に笑った。
「今は…特に何もやってないんじゃないか?」
「何で疑問系な上に他人事っぽいの?」
「闇祓いをやっていた」
ポッターが口を閉ざす。オレの口ぶりと過去形に意味を悟ったのだろう。
オレが怒ったとでも思ったのかルーピンが気まずそうな顔をする。
ちょっと苛め過ぎたかな。
「両親は11年前に死んでるんだ」
薪がパチパチと燃える音がする。
ブラックが「悪い」と謝ってきた。
そんなの気にしてないのに律儀だね。
オレは膝を抱え込むように座りなおし薪を見つめて話し出す。
「二人とも闇祓いでね。殺されたんだ、例のあの人に。それで今オレは祖父母に育てられてるんだよ」
ただ、それだけの事だとオレは笑った。
「そんなに暗い雰囲気になるような事じゃない」
「親が殺されたのに、それだけの事なのかよ」
ブラックが嫌に刺々しい言葉をオレに投げかける。
視線もきついし。
でも、それはブラックだけじゃなくて後の二人も同じらしい。
オレはこっそりため息を付いた。
「オレは一歳だったんだ。何が出来るわけでもない。それに二人とも望んで闇祓いだったんだぞ。職務をまっとうして生きた人間に何で死んだのか何て言ったら逆に失礼だ。闇払いになった決意を批判しているじゃないか。それに、じゃぁ例のあの人を怨めって言うのか?
オレは…悪いけどそこまであの人を嫌ってはいない。オレはその人を見てから判断する人間なんだ。父と母が死んだ事も何か理由があったかもしれない」
「あいつに賛同するつもりか!あいつは悪だぞ!」
ブラックの言葉にオレは目を細めた。
これ以上は時間の無駄だ。
オレは立ち上がり、小箱の蓋を閉じて本を立てに積み上げた。
突然動き出したオレにルーピンが驚きポッターとブラックが警戒した。
「悪いけど、お前の考えをオレに押し付けるな」
オレはそういうと本を抱え上げて、自分の部屋へと戻るため階段を上がった。
後ろから痛いぐらいの視線を感じたけれど、オレは振り向きもせずに駆け上がる。
談話室を離れて自分の部屋へと行く途中の廊下で窓の外を除いたらいつの間にか雪が積もっていた。
冷静になったオレは何だか言い過ぎた気も
考えを押し付けているのはオレだという気もしたが、してやったという気分にもなった。
仲は険悪になったかもしれないが。
「…イエーイ」
勝ち負けというわけでは無いがなんとなく呟いてみた。
手にもっていた本の重さを途端に感じ、オレはずっしりと重い本を抱えて自室へと向かうため再び足を動かした。
唯一人反省中ニツキ
(何でオレはいらんところで意地を張っちゃうんだろう)(ハァ)