冬休み。
あの一件から次の日。
俺は自室の窓に腰をおろし外を覗いていた。

「シリウス、何か見えるの?」
「別に」

俺はベッドの上でゴロゴロとクディッチの雑誌を捲っているジェームズに簡潔に答えた。
別に含みがあるわけではなく、ただ単に本当に何も見えないのだ。
見えても雪が積もっている事位か。
前髪を掻き揚げて欠伸を一つする。

「暇ならチョコ食べる?」
「嫌がらせか?」
「今日は冴えてるじゃないか」

振り向いてリーマスを見ると見なきゃ良かったと思った。
今やベッドの上におぞましいほどの量の菓子類が乗っている。
クリスマスプレゼントのおかげで1.5%増しだ。
見ているだけで胃がムカムカしてくる。
言い返す気力も無くなった俺は又、外を眺めた。


「ぁ・・・」


外にが立っていた。

唯でさえは小さいのに、此処から見たらさらに小さかった。
それでも、しっかり分かる。
前髪をゴムで結めているのか頭の上でゆらゆら揺れていて、
何だか子供らしさに拍車がかかりちょっと、いや大分可愛かった。
自然と昨日の事など忘れて口元が綻ぶ。
それを手で覆い隠しながらの行動を見守る。

と言ってもも動いているわけではなく突っ立っているだけなのだが。
ふと、が顔を上げた。

の大きな瞳と目が合った。
瞬間、は満面の笑みを浮かべて大きく手を振ってくる。
それが、その行動があまりにも可愛くて(後談その時は天使に見えたそうな)
俺は目が離せなかった。
そして、俺がその行動を黙って見ているとは飽きたのか禁じられた森の方へと歩き出した。

俺はそれを見送ると窓から身を離した。

「…それでね、リリーってば何て言ったと思う?」
「「貴方なんて大っ嫌い」」
「その話は何度も聞いたよジェームズ」
「絶対照れ隠し…グフッ」

リリーの話を(捏造混じりで)リーマスに話していたジェームズの頭に踵落としをして黙らせる。
リーマスはそれを止めるでもなしに無視してシリウスに向き直った。

「助かったよ。あの話は既に10回目だ」
「俺は15回聞いた」
「何処か行くの?」

マフラーと手袋を手に掴みとローブを着込んだ俺にリーマスは問いかける。

「ああ、外に」

そう言うと俺はジェームズをほったらかしにしてドアノブに手を掛けた。

「行ってらっしゃい」
「…ああ」


出かけに掛けられる声が有り難いものだと気が付いたのは此処に着てからだ。
俺はホグワーツでグリフィンドールで良かった。

「行ってくる」

俺はドアを開けて走った。




夜中と白昼の夢



「来たな!悪の根源、セパ太久郎昆布め!」
「俺は何役なんだよ!?」