「えーっと・・・」
おっと、反応に困るぞこれは。
仕切りなおして現状を話すと、今談話室のソファに座る俺の目の前には何だか俗に言う『ゴスロリ』の服を持って目をキラキラと輝かせているリリーさん。
朝の挨拶より先に「これ着て!」といわれた日にゃぁどうしたもんか。
「えっと、リリー。俺は生物学上男なんだけど?」
「そんなの知ってるわ!」
「・・・・・・着ろと?」
満面の笑みで頷かれた。
どうする。どうする、俺。
男として育ってもうすぐ14歳。
今更、そんなもの着れると思ってるのか?
チラリとリリーをみれば。
ああ、着なくてはいけないのだろうか。
前は短く後ろが長い黒いフリルの付いたチェックのスカートに、同じく黒いレースの付いた黒いシャツ、赤いネクタイ。
編み上げブーツと赤と黒の縞々の靴下。
やっべぇー、着たくねぇー。
周りを見回しても休日のしかも朝っぱらからいるわけもなく。
キラキラと目を輝かせるリリーさんと冷や汗が止まらない俺。
「リリー、良く考えてみろって。俺がソレを着ても気持ち悪いだけだから」
「何言ってるの!だから似合うのよ!」
「一応、男だしね?」
「160cmは許される範囲内だわ!」
「いやいや、許されないよ。ていうか今俺もしかして遠まわしに小さいって言われた?!」
「気のせいよ。は小さいから可愛いんだから」
「今、小さいって言った!」
「一々気にしてたらハゲるわよ!良いからさっさと着なさい!」
「ハゲ・・・っ!俺は爺ちゃんも父さんもハゲてないからハゲないもん!イヤー!乗っかってこないで!シャツに手を掛けないで!脱がさないで!」
「男なら潔くヤられなさい!」
「カタカナ変換は駄目だって!違う意味に聞こえちゃうから!許して!許してリリーさん!」
「・・・貴方本当に白いわね・・・腰だってこんなに細いし・・・」
「・・・ひぁ!あ、ちょっと触んないで、撫でないで、手つきが卑猥ー!リリーさん目が怖い!逝っちゃってる!戻って現実を見て!」
「ちゃんと、見てるわよ。ちょっと静かにしなさいよ。誰か来ちゃうでしょ」
「むしろ俺は誰かに来てもらって助けて欲しい!誰かー・・・むぐっ」
「し ず か に ね?」
リリーさんの細い手で口を塞がれて笑顔で言われた。
その笑顔に背中を冷たいものが走り抜け、俺は顔を真っ青にして大人しく頷いた。
過酷過ぎる運命に
文句を付けたいのですが
後日、その写真が密かに出回ったのは本人は知らない。