その日オレは結局一日中図書室で泣いていた。
奥まった方に居たせいで誰にも気が付かれずに、静かに鼻を啜りしゃくりをあげて目を腫らし。
夕方になった。もう部屋に帰らなくては行けない。
こんな顔誰にも見せられなくてオレは辺りを伺いながらコソコソと部屋に向かうことにした。
今日はセブルスは来ていないみたい。良かった。
絶対追求されるから。心配性だもんセブルスってば。
コソコソと、けれどもスピーディーに駆けて図書室を後にする。
目から溢れるものは止めどないし。何だよクソ。
泣きすぎで涙腺が麻痺してしまっているのかな。
寮へと続く道を歩きながら、もう部屋になんて戻らなくてもいい気がした。
このまま禁じられた森に行って死んでしまっても。
湖に身を投げても、今のオレは苦もなく死ねるだろう。
けど、オレには繋ぎ止めるモノがあった。
左耳のピアスに触る。
「かあさん……」
オレ、ちゃんと生きてるよ。
辛いけど生きてるよ。
死んでしまいたいけど生きてるよ。
涙なんてあの時全て枯らしまうほど泣いておけば良かった。
そしたらこんな事にならなかったのかな。
「…?」
名前を呼ばれて反射的に振り向いてしまった。
しまった。
「セブルス、ジェームズ…リーマス」
今一番会いたくない人たちが勢揃いだ。
セブルスがボロボロだとかジェームズの杖がセブルスに向いているだとか、リーマスが二人の間に立っているとか。
そんなこと全く目に入らなかった。
みっともない顔を見られてしまった。
オレは慌てて踵を返し寮へと向かった。
後ろから名前を呼ぶ声が聞こえたけど立ち止まる気なんて更々無い。
逃げなくちゃ。
オレの頭を巡るのはその一言だった。
慌てて寮に駆け込み部屋へと駆け込む。(レディに「どうしたの?」と聞かれたけど無視しちゃった)
ベットに潜り込みシーツにくるまって何だか涙が増えてきた。
ああ、もう最悪だ!
セブルスにもジェームズにもリーマスにもぐちゃぐちゃな顔を見られてしまった。
必ず追求されてしまう。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
話したら軽蔑される。
あの人のようにオレから逃げていってしまう。
後ろ指を指されて気持ち悪いって言われるんだ。
あの人達の記憶の中のオレが居なくなればいいのに。
全部無かったことになればいいのに。
明日なんて来なければいいのに。
時よ、美しいままにとまれ
(もう二度と無い物ねだりはしないから、神様どうか、お願い)