昔から、何かを欲しがると、必ずそれは手に入らなかった。
何度も味わったその感情を、オレはもう受け入れたと思っていたのに。
今、このときも、ひどく胸が痛むんだ。
逃げるようにして帰ってきた自分の部屋。
泣き顔を友達に見られ、オレはさらに打ちひしがれた。
ああ、もうだめだ。
だめ、もう何が何だか、本当に、だめ、だ
友達も、恋も、全部リセットしなくちゃ
もう、
こわれちゃう
胸が痛いよ、
「しりうす……」
この響きはこんなに優しくて、胸に染みるのに、痛いんだ。
* * *
シリウスは中庭にいた。
あの後、僕とリーマスはシリウスを探して彷徨って、ようやく長本人を見つけた。
「ほんとに!?本当にいいんですか!」
「ああ…、好きにしろ」
「うれしいです!シリウスさんと…」
ただ、その場面は最悪な場面だった。
「お付き合いできるなんて!」
「シリウス」
その場面を遠慮せずに壊しに入るリーマス。
いつもはこういう場合空気を読むくせに、そうとう頭にきてるようだ。
(でも、さっきの真白をみたらそうなるよね…)
「悪いね、お嬢さん。ちょっとシリウスを貸してもらえるかな?」
僕がにっこりと笑って、少女(ネクタイカラーはグリフィンドールだ)に言った。
少女は真赤な顔をして逃げるように去って行った。
「何だよ、タイミング悪いな」
リーマスの様子に気がついていないのか、シリウスはそっけない。
「ねぇ、今のなに?」
リーマスが分かりきっているくせに聞いたりする時は、虫の居所が悪い知らせだ。
「見てただろ。告られた」
「それでオーケーしたんだ?」
「俺は、好きにしろっていっただけだ」
「つまりそれは承諾でしょう?」
「そういうことになるな」
「………」
何も言わないリーマス。
ああああ、雰囲気が、怖い。
何で気がつかないんだ、シリウス!リーマスの後ろをよく見るんだ!
不自然に浮かべている笑顔、そして、強く握られて震えている拳。
リーマスも痛いみたいだ。
「シリウス、最近、と何かあったの?」
僕がリーマスに代わって、シリウスに問いかける。
一瞬顔を硬直させて、直ぐにそっぽを向く。
「別に、なにもねぇよ」
シリウス、バレバレだよ。
「シリウス、さっき、泣いてるを見かけたよ」
「っ!……へぇ…」
一瞬肩が揺れたが、何事もないように振る舞う。
君は本当に嘘が下手だね。シリウス。
「僕らの姿見たら、寮に逃げて行っちゃったけど…。最近、シリウス、のこと避けてるよね」
「別に…」
「嘘、避けてるよ」
「ねぇ、これは僕やリーマスの勝手な見解だけどさ」
きみ、が好きなんじゃなかったの?
信号の交差が止まらない
(俺の世界、さようなら)