俺は何処にでも居る一般人だった。
ドラマに出ている居るモブ以上にモブとして居られる程の、何にも欠けず何も持たず、唯漠然と存在だけを与えられた人間だった。
これから先もそうであり、それは変えようもない事であり、普遍的真実で、必然的真理。
俺は御伽噺に出てくる、白馬の王子にも、灰にまみれた姫にも、鏡からその美貌を妬む者にもなれない。
俺に与えられた使命は、その主役達を持て囃し噂し人混みの一因となること。
誰だってそんなものだろう。
皆の的になれるのは一握りの神の吐息を吹きかけられた者だけ。
それを妬んだり、それに加わる努力をしたりする人もいるだろうけど、俺はそれすらもしない、ありのままの現状を打開する気さえ起きないような、考えつかないような、古典的なモブだ。
そう、俺は現状に満足して、背伸びすらしないような、人間なのだ。
否、背伸びとか、そんな事を考えもしなかった。
俺について考えることも無いほど、漠然と生きていたのだ。
ちなみに両親共に魔法使いなので魔法を使うという環境で産まれ育つのは当たり前。
マグルの世界の子は羨ましい。
一々魔法なんかで驚いていられるんだから。
俺は後1週間で17歳になる。
つまり俺は今ホグワーツ最高学年の7年生なわけだ。
だけど、不要な脚色は止して貰いたい。
俺は唯のハッフルパフの7年生。
クディッチの選手でも監督生でも、ましてや秀才でもない。
成績なんて逆に吃驚するぐらい真ん中だ。
残念ながら知り合いも、失礼ではあるけど、俺同じようなモブタイプ。
類は友を呼んだのだ。
そんな俺のモブ人生もたった今保健室で終わりを告げることとなった。
「ミスターブランシュ…。貴方はあと…2週間の命です…」
俺の人生の終わりと共に。