「おい、。伯爵からだ。」
差し出された一通の白い手紙。
手に持っていた火のついた葉巻を口で一息吸った後ぐしゃりと握りつぶした。
「勿体ねぇ…。」
まだ吸えたのに、と言ってくるティキに手に残った葉巻の残骸を投げつけ手紙を奪い取った。
何すんだよ、と文句を言いながら体からカスを払うティキを無視して手元からナイフを取り出し封を切った。
黙々と字を追う俺の横でティキが喋り出す。
「そろそろ、始まりってわけよ。、この間の晩餐会に来なかっただろ?」
「あそこは嫌いだ。」
「家族がか?」
分かっているのに聞いてくるティキに苛ついて顔を上げると予想通りニヤついた嫌な笑みを見ることになった。
「…俺はお前が嫌いだ。」
自分でも分かるほどに、こめかみをひくつかせて笑いかける。
それをみたティキは青い顔をしながら明後日の方向を向き懐から煙草を取り出して火を付けた。
「で?何て書いてあったんだ?」
「中見てねぇの?」
「生憎、そこまでマナーが無い訳じゃない。」
「…さんハ、教団に潜ッテ密偵をシテくだサイ☆」
伯爵の声真似にかそれとも指令にか、もしくはどちらもなのかは分からないがティキの顔は渋い顔をしている。
「心配してくれてんの?」
からかうように言うと殴る素振りを見せてきたので慌てて逃げるように一歩下がった。
下がったつもりだった。
「あんらまぁ。」
下がる前に腕を掴まれいつの間にかティキの腕の中。
「ババ臭せぇ声だすな。」
「そいつは失敬。」
笑いながら返すとしっかりと抱きしめられた。
煙草の匂いがする。
何も言わずの肩に顔を埋めるティキの頭を撫でながらは泣きたい気持ちになった。
間違いなくばれたら殺されるだろう任務に。
ここに戻ってこられなくなりそうな恐怖に。
それでも
「だいじょーぶ。俺、強いから。」
その言葉はティキに言っているのかそれとも自分にいっているのか。
はティキの胸に顔を埋めた。
この匂いが自分に染みついてくれたら良いのに、なんて思った。
cigarette