今日は何だか良いことありそうです。
ビルからビルへと飛び移り、その途中でトリックを決めていく。
ほとんど無意識にやっているので、何のトリックをしているのかは憶えていないけど、こうやって風を切るのが好きだから。
夜の街を徘徊中。
「…?」
突然聞こえてきた声に足を止めて振り返ると見知った顔がそこにあった。
「アギト…」
かつて、彼とアキラとで組んでいた時代がフラッシュバックした。
変わらない彼がそこにいる。
否、彼は変わった。
空は青く深く、黒く広い。
今の彼は知らない。
「……」
でも握られた、この冷たい手は知っている。
「アギト…ッ!」
手を引かれ顔を埋めた、この胸も声もすべて知っている。
なのに何で彼をこんなにも遠く感じるのか。
「アギト…アギトッ!」
逢いたかった。
すぐ近くにいるのに遠くにいる彼に、近づきたくて何度も彼を呼ぶ。
愛してる。
愛してるんだ。
おいていかないで。
「…逢いたかった…」
彼の一言で俺は安心する。
こんなに彼に溺れているのに。
彼には届いていないのだろうか。
「、小烏丸に入れよ」
その言葉を待っていた。
もう一人じゃなくて良い。
彼に一歩近づけた。
素直に嬉しかった。
晴天より猶、青く 暗空よりも猶、黒く