「ねぇ、はさぁ」

夕焼けが美しく部屋を橙黄色に染めていく。この光景を私は何度見ただろう。
ガラス張りの窓辺に立つ男。
偶々イタリアの街中で見かけて、一目見て私の全てを捧げるに値する人だと悟った。
それまで退屈で単調な日々を上司に言われるまま行ってきた私にはその衝動に抵抗する必要がなかった。
あとはもう一心不乱にやってきた。
その男の素性を調べて、自分の名をあげて、その男に自分を飼わせ。
猟奇的なまでに私の心を支配し続けてきた男の瞳が私を捉えたときの感情を何と形容しようか。
あの第一印象と同じく私の全てを捧げられる喜び、あの瞳が私を捉える独占欲、声すら私の全てを理解して包むかの如く、心地の良いものだった。
私の全てはこの男のためにあり、私はこの男のために産まれてきたのだと、私の頭の中で妙な確信があった。
この男が信じた道を信じるのは当然で、必然で。私はそれに忠実に従うのみ。

「最後まで僕に付いてきてくれる?」

「…ええ、もちろん。白蘭」



I'll believe in desire.