さん、何処か行っちゃうんすか?」

戦が終わって各々が蝶のメンバーと談笑しているとき、カズはこっそりとに先の話の続きを尋ねた。
が吃驚したような表情を浮かべて直ぐにまた寂しそうな笑顔に戻った。

「そうだね、どうしようかと思ってるところ…かな?」
「俺は、寂しいです」

さっき言えなかった事が不思議と今ならすらすら言える。

「出来れば何処にも行ってほしくない。ずっと此処に居てほしい。けど、」

そう思った。けど、さっきのの後姿を見て思った。

「けど、俺はさんが満足のいく事をすれば良いと思う。確かに離れたくない。でも、さんの居場所が此処じゃない気もした。さっき跳んでいった時分かった。貴方は俺らを通して別の場所を見ている」
「っ……」
「でも、さんは俺達の事もちゃんと見ていてくれている。だから悩んでいる。俺達はそれだけで十分です」
「………」
「貴方のしたい事をして下さい」
「カズ君…」

言いたかったことを言えてすっきりしたのか照れくさそうに帽子で顔を隠すカズ。
はそれをみて笑った。

「うん、ありがとう」

こちらもすっきりしたから。

「あ、でも俺らのこと忘れられたら悲しいんで…えっと…」

カズはポケットをごそごそと漁り出した。

「こんなんしか無いんスけど…これ見て思い出して下さい」

腕を引かれて、何かと思ったら、腕に巻かれた青いリボン。
余った部分を蝶々結びにしてカズは笑った。



君の笑顔に何度救われたことか
言葉では言い表せないほどの気持ち






「オニーサン決まったよ」
「うん、そっか。分かったよ」

一言で全てがこの人には筒抜けだ。
魔法使いと名乗るだけ会ってオニーサンを呼ぶとの周りから時間が消えたかのように全ての動きが止まった。
恥ずかしそうに帽子で顔を隠すカズも
笑ってじゃれあっているカズも英喜も
それを周りでほほえましく見るアギトも皆も
いつからかこちらを見て微笑んでいる啓介も
全てが愛おしい。




だからこそ、背を押された俺は歩き出そう。