夜。月明かりの中6人の人間がビルの上に居た。
一人は柵の上に立ち、二人は縁に足を投げ出して座り、一人は壁に背を預け、一人は立ち、一人は寄り添う。
思い思いの着こなしをしながらも5人は一様に白いコートを羽織っていた。
顔は窺えない。
「ここをマークしたら今日はお仕舞いよね、チカ?」
「その通りだよ、咲羅」
チカと呼ばれたライダーに寄り添っていた咲羅と呼ばれるライダーがコートに付いているフードの中で嬉しそうに笑った。
「司、俺足捻ったかも」
「なら、んなとこに乗るな。阿呆英喜」
柵の上で仁王立ちしていた男、英喜と呼ばれたライダーが壁に背を預ける司と呼ばれるライダーを振り返ってそう言うとニベも無く一刀両断された。
縁に座り足をぶらぶらさせていた一人が隣を見た。
「寒くない?」
「んじゃ、帰りますか」
足をぶらぶらさせていた男が先に立ち座っている男に手を差し出した。
「ありがとう、啓ちゃん」
その手を取って優雅に立ち上がる。
「それじゃぁ、また明日」
そう言ってチカと咲羅、英喜、啓が去っていった。
「帰るぞ、」
「うん」
2人は去っていった。
壁に貼られたステッカーとと呼ばれた青年のコートに描かれた絵は良く似ていた。
彼らは暴風族(ストームライダー)。
ステッカーに描かれている絵・字は
Butterfly
***
「Butterflyが又出たらしいぞ」
怒涛のように暴風族を駆け巡る噂。
最近突如として現れたそのチームは一気に縄張りを広めていると現在噂の脚光の的だった。
顔は誰も見たことが無く、そのチームのメンバーは必ず白いコートを着ているのが目印で、その中の一人、蝶の柄の入ったコートを着ている奴がヘッドだという話。
全員、A・Tのレベルは測れないが凄腕である事は確かで、特にやはりリーダーは魅せる。
「と、いうのが今話題のButterflyであります」
手にもっていたパソコンから情報を読み上げアイオーンは顔を上げた。
「つか、何でお前こんな所に居るんだよ、アイオーン」
「私は何時でも何処でも貴方のいらっしゃるお側に控えております」
イッキの問いに一同が頷く。
そんな中アイオーンがジェースチャー交じりでイッキに訴えかける。
「でさ、このバタフライが凄いらしいぜ」
「パクってんじゃん」
その言葉はイッキたちの心を通過してしまったようだが。
イッキたちは誰も居なくなった放課後学校でA・Tの練習をしていた。
噂を聞きつけてきたのはカズでそれを話したのだが如何せんいまだ、この世界に慣れきれていない彼らには新チームの登場に疎かった。
そこで、アイオーンの登場となったわけだ。
「イッキたちを追い抜いて今最もAクラスに近いチームだよ、このチームは」
リンゴがグラウンドの芝生に座り話す。
「ナヌッ!」
イッキが変な顔をするのでリンゴは肩を揺らし驚いた。
「・・・上等じゃねぇか」
「何が?」
「喰いごたえがあるってことだろ」
そんな2人を他所にアギトとカズが話す。
若干名を除けばいつも通りの風景だった。
「あー!!」
突然、イッキの腕に抱きついていたシムカが空を見て叫んだ。
何事かと全員がシムカの目線を追えばそこは学校の校舎の上、屋上で、その柵に人が立っていた。
「!」
シムカはもう一度そう叫ぶとイッキから腕を放して柵の上に立つ人に向かってA・Tを蹴った。
あっという間に柵の近くに立つと今度は立つ人の腕を取ってもう一度こちらに翔けてきた。
所要時間10秒足らず。
立っていた人物も拒むきっかけを失ったのか大人しく引きずられていた。
「、お久しぶりですね」
「ハイハイ、そうですねー・・・っていうか人の服の中に逢って早々手を入れるの止めてもらえますか?」
服の中に手を入れてきたアイオーンを蹴りその人物はイッキたちをみた。
カズより少し高いくらいの背に黒いコートを羽織、綺麗な茶髪、幾筋か入れられた赤いメッシュに黒い瞳、白い肌。
手入れされた人形のようなその人物にイッキたちは呆然と見惚れた。
「君たちが小烏丸かな?」
鈴を転がしたような声に無心にイッキは首を縦に振った。
「彼は」
「・・・」
噛締めるように繰り返すとシムカに紹介された彼はやわらかく笑った。
「久しぶりだな、」
アギトがに話し掛ける。
「よぉ、アギト。こないだはどーも」
がヒラヒラと手を振った。
「知り合いなのか?」
カズが咢に尋ねるとアギトが不適に笑った。
「迷子だったところを助けただ…」
「いやー!アギト、それは二人の秘密っていったじゃないかー!!!」
が大慌てでアギトの口を覆う。
クールな印象だったのが今ので一気に崩れた。
思ったより、取っつきやすい人かも知れない、と子烏丸の面々は思ったとか。
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