俺はどうすれば良いのだろう。
元の世界に戻るのが自然の摂理だと分かっていても、この世界に居たいと願う。
オニーサンは二択の選択をくれた。
俺に答えをゆだねたのだ。
どうすれば良いのかわからなくて俺は蝶のエリアを胡蝶の姿でフラフラと彷徨っていた。
雨に羽を濡らされた蝶のように。
タンッと足に力を入れて壁を蹴っていく。
この感触も元の世界に戻ってしまうと、無くなってしまう。
今まで仲良くなった人たちも、あの世界には居ない。
此処に居たい。
けど、啓ちゃんに謝りたい。
そう、俺は啓ちゃんに謝りたいのだ。
だから悩んでいる。
今、この世界に居る啓ちゃんは俺の昔から知っている啓ちゃんではない。
一緒で違う。
タンッと足に力を入れて壁を蹴った。
両親は今どうしているのだろう。
そう思うと一気に何だか不安になった。
捜索願いとか、死亡届けとか、墓立ってたりとか…
か、帰らないほうがいいのかな…?
「おや?」
何でイッキ君たちが居るんだ?
まだ蝶のエリア内で、イッキ君率いる小烏丸とスピットファイア、アイオーンクロック、リンゴちゃんにその他諸々。
流石にシムカは居ないけど、結構な人数が集まっている。
「イッキくーん。何やってんの」
俺は乗っていたビルからふわりと降りてイッキ君の隣に立った。
「あ、さん」
得意そうな顔をしたイッキ君を不思議に思い彼が向いていた壁を見た。
「ぁ……」
「見てくださいよ、此処仕切ってるButterflyに喧嘩売ってエリア奪おうと思って」
ステッカー上張りしたんスよ
「これで奴等も年貢の納め時。そろそろ、姿表すでしょ」
鼻が高くなっているイッキ君に呆れつつも全員笑って頷いていた。
ただ一人、スピットファイアはこちらを見ている。
俺はそんなスピットファイアに、にこりと笑いかけてポケットから携帯を取り出した。
「もしもし、司?全員揃えてB-21に来て。俺のコートも忘れずに」
俺の声はイッキ君達の声に紛れて誰の耳にも聞こえなかったらしい。
「さんも見ていきますよね!」
リンゴちゃんの興奮した声に俺は笑った。
言葉を返そうと思ったら、此処に近づいてくるホイールの音が聞こえて俺は口をつぐんだ。
「っ!Butterfly!」
アギトの声に全員が顔を上げた。
ビルの上に白いコートを靡かせる一団。
「いくらなんでも早すぎます!」
アイオーンの驚いた声が響く。
「!」
スピットファイアがこちらを驚いたように見てきた。
「ステッカーの上張りはバトルの挑戦状。そのステッカーの上に更に張れば、バトルを申し入れるんだったよね?」
俺はバチンと音を立ててButterflyのステッカーを小烏丸の上から貼り付けた。
「こんにちは、小烏丸の諸君。ようこそ、Butterflyの生息地へ」
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