「思ったより早かったね、司」
「まぁ俺の情報網を侮ってもらったら困るね」
「ああ、チカちゃんのおかげか」

壁を蹴って仲間の元に壁を駆け上る。
司から白いコートを受け取り黒いコートを脱いで袖を通した。

「あの蝶の柄!Butterflyのリーダー!」
「まさか!が!」

下で皆の驚く声が聞こえた。
チラリと下を伺うとスピットファイアだけ渋い顔をしている。
俺は苦笑して、壁を蹴った。

「先に行く。司、チカ、後頼んだ」

それを言い残して先に姿を消した。



* * *


「あ、ちょっと何処に!」
リンゴ声に全員が直ぐにを追おうとする。
それを遮る様に司達が立ちはだかった。

「まあ、待て」

司が興奮気味のイッキ達をなだめる。
何だと言わんばかりの顔に心底面倒くさそうな顔を浮かべる司。

「あ…れ?もしかして、高月…司ハン?」

ベンケイが驚いたような声を出す。
司は被っていたフードを外してベンケイを見下ろした。

「よぉ、久しぶりだなベンケイ」
「っ!驚いたで。司、お前ATやるのかいな」

ヨシツネが苦い顔をして司を見た。

「あ、顔見せちゃうんだ。まぁ、良いけどね」
「その声!もしかして…」
「やぁ、ご機嫌いかがかな。風音」

チカも被っていたフードを外した。
顔見知りがまさか蝶の中に居るとも思わず数人が反応を返した。

「まさか…ATやってるとは…」
「やってないなんて一言も言ってないけど?」

人当たりの良い顔を浮かべながら告げるチカ。

「チームに入ってるなんて知らんかったで?」
「言った覚えが無いからな」

司はそ知らぬ顔で懐からタバコを取り出して吸い始めた。

「そんなわけでね、此処から先は国民的アイドルとかそんなんがメンバーだったりするわけよ。その事は口外しないなら先に進んで良いけど…それを、守れないんなら帰ってもらうよ。力ずくでもね」




「ああ、それともが居るから帰る…?」




戦いたくないでしょ?


クスクスと笑うチカ。


「ふっざけんじゃなぇよ!」

イッキが壁を殴りつけた。
睨みあげるようにチカ達を見る。

「俺はButterflyに喧嘩を売りにきたんだ、例えさんがButterflyでも纏めてぶっ潰す!」
小烏丸たちが全員敵意むき出してチカ達を見上げてくる。

「遊びすぎだぞ、チカ」

口元を押さえて肩を震わせるチカを見てそれまで黙っていた司が口を開いた。
呆れたような声色を含むその声に全員キョトンとした。

「チカのお遊びだ。気分を害したのなら悪かった」
「ごめんごめん、君達の決意がどんなものなのか気になってね」

笑いすぎで出た涙を拭いながらチカが謝る。




「ついてこい」



チカと司が踵を返してさっきが姿を消したほうへ向けて足場を蹴った。